配管の汚れを水で洗う発想、RAS特許が示す運転の新常識
ニュースの概要
ベルデアクアは、閉鎖循環式陸上養殖(RAS)の配管内にたまる汚れを抑える水処理技術で特許を取得した。電気分解でつくった次亜塩素酸などの酸化性物質を含む水を、処理工程の上流側へ戻す仕組みである。流れの途中で微生物の増殖を抑えつつ、有機物の汚れを分解して取り除く。RASは飼育水を何度も使い回すため、水そのものの質に加えて、配管の内側の衛生状態も安定運転を左右する。堆積した汚れは、酸素の乏しい場所で硫化水素を生む原因にもなる。今回の特許は、見えにくい配管内部の管理に正面から取り組むものといえる。
引用元: ベルデアクア、RAS配管の汚れと硫化水素リスクを抑える水処理技術で特許取得(PR TIMES)
分析・見解
水槽の外にある「見えない汚れ」が事故の入口になる
RASの議論は、魚を育てる水槽とろ過装置に集中しやすい。しかし事故の火種は、意外と配管の内側にある。
飼育水には、えさの食べ残しやふん、魚の粘液が溶け込んでいる。これらが管の壁にじわじわ付着し、微生物の膜(=バイオフィルム)を作る。膜が厚くなると、はがれた塊が水流に混じってポンプやろ材を詰まらせる。
硫化水素は「酸素のない隙間」で静かに生まれる
堆積物の奥は酸素が届かない。そこでは硫酸塩を食べる細菌が働き、硫化水素が発生する。この気体は低濃度でも魚のえらを傷め、高濃度なら人にも危険である。
厄介なのは、普段は水質計の数値に現れないことだ。配管の洗浄や機器の点検で堆積物をかき回した瞬間に、一気に放出される例がある。つまり汚れの管理は、魚の命と作業者の安全の両方に直結する。
薬を足すのでなく、水の中で作って戻すという設計
今回の技術の特徴は、薬剤を外から投入するのでなく、電気分解でその場で酸化性の水を作る点にある。塩素系薬剤の保管や運搬の手間が減り、濃度も電気の量で調整しやすい。
さらに上流へ戻すことで、下流の配管全体が薄い殺菌水にさらされる。局所的な洗浄では届かない場所にも効きやすい。
一方で注意もある。酸化性物質は、ろ過槽で働く有益なバクテリアにも悪影響を及ぼしうる。残った塩素が魚に触れれば、それ自体が毒になる。どこで濃度を落とすかという設計が、技術の成否を分ける。
本当の価値は、洗浄頻度と停止時間を減らせるかにある
実際の養殖場では、配管掃除のために運転を止める時間が収益を削る。もし定期的な分解作業を減らせれば、人件費と停止リスクの両方が下がる。
ただし、特許の取得は性能の証明ではない。実機での長期データ、魚種ごとの影響、電力と部材の費用がそろって初めて評価できる。今後は第三者の検証結果が焦点になる。
ビジネスへの影響
導入を考える前に、自社の配管の状態を測る
まず確認したいのは、現在の汚れの実態である。点検口から堆積物の厚さを記録し、季節ごとの変化を残しておく。硫化水素は、検知器を要所に置けば安価に見張れる。
この基礎データがないと、新技術を入れても効果を比べられない。補助金や投資の説明にも、数字の裏づけが要る。
見るべきは価格より運転全体のコスト
装置の導入費だけで判断するのは危うい。見るべきは、電気代、電極の交換周期、残留塩素を下げる工程の追加費用、そして洗浄作業で減る人手の合計である。
小規模な事業者なら、新設時に組み込むほうが改造より安く済む場合が多い。既存施設は、一系統だけで試験運用してから広げるのが現実的である。
事業者と投資家が確認したい三つの質問
第一に、対象魚種での試験結果はあるか。第二に、有益な細菌への影響をどう抑えているか。第三に、故障時に薬剤洗浄へ戻せる手順があるか。
この三点に明確に答えられる提供者なら、信頼度は高い。逆に、効果だけを強調して副作用を語らないなら、慎重に構えるべきである。