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広島かきの陸上養殖に挑戦、猛暑で揺れる海に頼らない安定供給と採算の壁をどう越えるか

広島かきの陸上養殖に挑戦、猛暑で揺れる海に頼らない安定供給と採算の壁をどう越えるかを表す陸上養殖施設のイメージ

ニュースの概要

広島県産のかきを、海ではなく陸上の施設で育てる取り組みが動き出している。NHKが特集で伝えた。背景には、猛暑による高水温やかきの大量死など、海の養殖が天候に左右されやすいという現実がある。陸上養殖は水温や水質を人の手で管理できるため、出荷量を読みやすくする狙いがあるとみられる。広島は国内有数のかき産地であり、安定供給は産地全体の課題でもある。一方で、餌となるプランクトンの確保や設備費、電気代など、越えるべき壁も多い。本稿では、この挑戦が持つ意味と、事業者や買い手に与える影響を整理する。

引用元: 広島特産かきを陸上養殖へ 安定供給目指して挑戦【特集】(NHKニュース)

分析・見解

猛暑と大量死が、海だけに頼る危うさを示した

広島県は、かきの国内生産量の約6割を占める日本最大の産地である。しかし近年は、夏の高い水温や雨の少なさで、かきが大量に死ぬ年が続いた。2023年の猛暑では、海域によって大半が死んだとも伝えられている。生産者の高齢化や後継者不足も重なり、被害を受けて廃業する例もある。供給が細れば、ブランドそのものが傷む。安定供給は、産地を守る話でもある。

海で育てる以上、水温や塩分は人が選べない。陸上養殖は、この「選べない部分」を人の管理に近づける試みだ。農業でいえば、露地栽培から温室へ移るような変化にあたる。

魚と違い、かきは餌の藻まで育てる必要がある

陸上養殖と聞くと、サーモンのような魚を思い浮かべやすい。だが、かきは事情が違う。魚は配合飼料(=栄養を調えた粒状の餌)で育てられる。かきは海水中の植物プランクトンをこし取って食べる。つまり水槽の横で、餌になる藻も培養しなければならない。

ここに費用がかかる。水槽、ポンプ、水温管理の電気代に、藻の培養設備が加わる。陸上養殖の採算を左右するのは、かき本体よりも餌の確保かもしれない。一方で、餌の藻を選べば、味や大きさを調整できる可能性もある。

稚貝から出荷まで通せることの強みと説明責任

海の養殖では、稚貝を付着させる作業(=採苗)も天候に左右される。赤潮(=プランクトンの異常な増殖)のような外部要因もある。陸上で稚貝から出荷まで通せれば、育つ期間や出荷時期を計画しやすくなる。管理された水で育てれば、生食用に欠かせない衛生面の説明もしやすい。

ただし、広島のかきはブランド力で値が付く商品でもある。陸上産を「広島産」としてどう名乗るのか。海育ちとの味の違いをどう説明するのか。技術の話と同じくらい、売り方の設計が問われる。

海の代わりでなく、夏の穴を埋める補完役になる

陸上で広島の海と同じ量を作るのは、現実的ではない。かきは冬が旬で、生産の大半が秋から春に集中する。広い海面を安く使えることが、海の養殖の最大の強みだ。

陸上養殖がまず担うのは、猛暑の年にも一定量を出せる保険と、旬以外の時期の出荷だろう。陸上サーモンでは、立ち上げ期に赤字が長引く例も少なくない。かきでも同じで、小さく始めて数字を確かめる期間が長く続くと見る。

ビジネスへの影響

まずは夏の欠品を埋める用途から試す

かき関連の事業者が陸上養殖を検討するなら、海の養殖を全量置き換える発想は避けたい。最初に狙うのは、猛暑の年に足りなくなる量の補充や、小ロットの高付加価値品だ。たとえば通年メニューにしたい飲食店向けの契約や、粒ぞろいのギフト商品である。

小さく始めれば、設備投資が膨らむ前に、成長の速さ、死亡率、味の評価を実データで確かめられる。行政や研究機関との連携も早めに考えたい。種苗や藻の培養は専門性が高く、自社だけで抱えると立ち上げに時間がかかる。

投資判断では電気代と藻の培養費を先に見積もる

採算の計算では、水温を保つ電気代、ポンプの動力、餌の藻の培養費が三大項目になる。電力料金が上がれば、利益は簡単に削られる。工場の排熱や再生可能エネルギーが使えるかなど、立地の条件も含めて比べたい。

補助金に頼る計画には注意が必要だ。補助が終わった後も黒字になるか、販売価格を厳しめに置いて試算しておく。設備の規模を段階的に増やせる設計かどうかも、判断の分かれ目になる。

飲食店と流通は仕入れ先を分ける準備をする

買う側の教訓は、一つの産地や一つの方式に偏らないことだ。猛暑で供給が細る年に備え、複数産地との取引や、数量に幅を持たせた契約を整えておくとよい。陸上産が出回れば、育て方や産地表示をメニューや売り場で伝える工夫が、差別化の材料になる。管理された環境で育ったという情報は、生食の需要にも響く。

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