このページはPR・広告を含みます

静岡ガスが陸上養殖のクエタマを初出荷 ガス会社が魚を育てる意味と高級魚ビジネスの勝ち筋

静岡ガスが陸上養殖のクエタマを初出荷 ガス会社が魚を育てる意味と高級魚ビジネスの勝ち筋を表す陸上養殖施設のイメージ

ニュースの概要

静岡ガスが、高級魚のクエとタマカイを掛け合わせた「クエタマ」を陸上の養殖施設で育て、初めて出荷した。商品名は「駿河の白幻」で、出荷前には血抜きなどの処理も行っている。養殖は2024年から始まっており、海の状況や天候に左右されにくい安定した生産が見込める点が特徴だ。同社は将来的に年間3万匹の生産を目指す。エネルギー事業で培った設備運用の知見を、地域の産品の価値を高める取り組みに生かす狙いがある。高級魚の供給は天然漁獲に頼る部分が大きく、量も価格も安定しにくいという事情がある。ガス会社が魚を育てて売るという異色の事業が、いよいよ販売の段階に入った。

引用元: 静岡ガス、陸上養殖魚「クエタマ」を初出荷(Daiichi-TV NEWS NNN)

分析・見解

陸上養殖の水槽は、ガス会社が得意な設備の世界

陸上養殖(=海ではなく陸の水槽で魚を育てる方法)は、魚を育てる仕事というより、水を管理する仕事に近い。水温、酸素、水の汚れ、ポンプの動き。どれかが止まれば、数時間で魚は弱る。つまり、止められない小さなプラント(=工場設備)のようなものだ。

ガス会社は、こうした設備を長年扱ってきた。熱を安定して作る。供給を止めない。異常を早く見つけて直す。養殖に必要な力と重なる部分が大きい。水を浄化して繰り返し使う循環ろ過の方式では、電気と熱の使い方でコストが大きく変わる。発電設備の排熱(=使い切れずに残る熱)を水温の維持に回せれば、燃料費の面でも強みになる。エネルギーに詳しい事業者が有利になりやすい分野だ。

クエとタマカイの交配が、育てやすさと味を両立する

クエは身の締まりと旨みで知られる高級魚だが、育つのが遅く、養殖には時間がかかる。一方のタマカイは世界最大級のハタの仲間で、成長が速い。この二つを掛け合わせた交配種がクエタマで、近畿大学が開発した魚として知られる。クエの味に近い品質を保ちながら、育つ速さを取り入れた魚と言える。大きな体は、一匹あたりの身の量も増やしやすい。

ハタの仲間は暖かい水を好むため、冬場の水温維持が海での養殖の壁になる。陸上施設なら水温を一定に保てる。養殖で重い費用は、育てている間の餌代と電気代である。出荷までの期間が短くなれば、その分だけ費用は減る。成長の速さは、味と同じくらい採算を左右する。

年間3万匹は何トンか、数字で現実味を考える

仮に1匹が3キロで出荷されるなら、年間3万匹は約90トンになる。サーモンの大規模施設と比べれば小さいが、高級魚としては意味のある量だ。仮に1匹1万円で売れるなら、売上は3億円規模になる。これはあくまで試算である。

ただし、陸上養殖には失敗例も多い。米国のアトランティック・サファイア社は、サーモンの大量死や費用の膨張で苦戦した。水槽は小さな世界で、病気や水質の乱れが一気に広がる。数千匹で成功しても、3万匹で同じ結果になるとは限らない。規模を広げる段階で試されるのは、設備を止めずに動かし続ける力である。

初出荷の先で問われるのは、売り先と値付けの力

血抜きまで出荷前に行った点は見逃せない。魚の味は、締め方や処理で大きく変わる。養殖の強みは、同じ品質の魚を決まった時期に届けられることだ。天然のクエは入荷が読みにくい。飲食店にとって、仕入れの予定が立つ価値は大きい。

一方で、「駿河の白幻」という名前が浸透するには時間がかかる。魚の質に加えて、物語の作り方と流通網の整え方が次の課題になる。高級魚は量が少ないからこそ価値がある。一気に売り込めば値崩れの恐れもある。静岡の食文化や観光と結びつけられれば、価格を保ちやすい。

ビジネスへの影響

異業種が養殖に入るなら、三つの数字を先に見る

陸上養殖で収支を左右するのは、主に三つの数字である。一つ目は、魚1キロを育てるのに使う電気と熱の量。二つ目は、稚魚が出荷まで生き残る割合。三つ目は、1キロあたりの販売価格である。

エネルギー会社なら、一つ目に強みを出せる。排熱の利用や電力の調達で、同業の新規参入者より低い費用を目指せる。ただし二つ目は、魚を育てた経験がものを言う。ここは外部の研究機関や先行する養殖業者との連携で補うのが現実的だ。投資判断では、損益が合う販売単価を先に逆算しておくと、事業の見通しが立てやすい。

規模は段階を踏んで広げ、止まらない仕組みを先に作る

いきなり年間3万匹の設備を作る必要はない。まず小さな規模で一年分の記録を取り、季節ごとの水温や餌の食いつきを把握する。そのうえで次の規模に進む。判断の目安を「生存率が何割を超えたら増設する」のように、数字で決めておくと迷いが減る。

備えとして重要なのは停電と機器故障だ。予備の電源、ポンプの二重化、異常を知らせる警報を整える。保険の対象範囲も早めに確認したい。魚が全滅すれば、一回の事故で数年分の利益が消えることもある。また、販売先の候補を事前に三社ほど確保し、出荷が重なった時期にも売り切れる体制を整えたい。

買い手側は、安定供給という価値を契約に変える

飲食店や宿泊施設にとって、天然の高級魚は入荷が読めず、仕入れ値も動く。養殖なら、月ごとの納入量と価格を事前に決める契約が結びやすい。まず少量の試験仕入れから始め、メニューでの反応を確かめるとよい。価格を天然物の相場に連動させず年間固定にすると、双方が計画を立てやすい。

自治体や観光事業者は、地元のブランド魚として宿泊プランや返礼品に組み込む道がある。供給元の企業と早めに話し合えば、売り先の確保にもつながる。

関連記事

ブログ一覧へ戻る