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高市戦略のフードテック9.7兆円、陸上養殖が植物工場の二の舞を避けるために必要な条件

高市戦略のフードテック9.7兆円、陸上養殖が植物工場の二の舞を避けるために必要な条件を表す陸上養殖施設のイメージ

ニュースの概要

日本経済新聞によると、高市政権が掲げる成長戦略の重点17分野のうち、フードテックの分野で9.7兆円規模の投資を見込む方針が示された。対象には植物工場や陸上養殖が含まれる。食料の安定的な確保と、新しい産業の育成を同時に進める狙いがあるとみられる。17分野の一つに位置づけられたことで、これまで農林水産業の周辺にあった技術が、国の成長戦略の中心に入ったことになる。金額の大きさもさることながら、陸上養殖が植物工場と並べて名指しされた点は、養殖業界にとって大きな変化である。

引用元: 高市戦略17分野、フードテック9.7兆円投資 植物工場や陸上養殖(日本経済新聞)

分析・見解

9.7兆円という数字が陸上養殖に意味すること

9.7兆円は、フードテック全体をまとめた投資の枠である。陸上養殖だけの金額ではない。植物工場や代替タンパク、スマート農業などで分け合うため、養殖に回る額は一部にとどまるだろう。それでも、国の戦略に名前が載った意味は大きい。補助金の対象、税制の優遇、規制の見直しは、こうした戦略文書を根拠に動くからである。17分野という整理は、政府が資金を振り向ける順番表のようなものだ。民間企業にとっては、どこに追い風が吹くかを読む合図になる。

植物工場の過去が示す、補助金頼みの落とし穴

植物工場は2010年前後にも政策の追い風を受けた。しかし電気代と人件費が重く、採算が合わずに撤退した事業者は少なくない。レタスのように単価の低い作物では、売値より先に費用が膨らんだ。陸上養殖にも同じ危うさがある。設備の建設費は補助で下げられる。だが、毎日かかる電気代や餌代、病気で魚を失う損失は、補助では消えない。国内でも陸上サーモンの大型計画がいくつか動いている。その成否がまだ見えない段階で資金の枠を広げる動きとも読める。

狙うべきは高単価の魚と、国内で足りない魚

陸上養殖は、水をろ過して使い回す方式(=循環ろ過式)が中心である。水質を細かく管理でき、赤潮や寄生虫の影響を受けにくい。一方で、設備費は海面養殖より重くなる。そのため、1キログラムあたりの単価が高い魚か、輸入に頼っている魚から先に採算が取れる。サーモン、エビ、ウナギなどが有力な候補である。ブリやタイのように、国内の海面養殖がすでに強い魚で正面からぶつかるのは難しい。

成否を分けるのは電力と人材の確保

独自の見方をひとつ挙げたい。陸上養殖は水産業というより、電気を魚に変える産業である。ポンプ、ろ過、温度管理、酸素の供給と、そのすべてが電力を使う。つまり、電気を安く安定して使える場所が有利になる。工場の排熱や、余った再生可能エネルギーのある地域は強い候補地だ。立地の選び方が、そのまま収益力になる。もう一つは人材である。水質を読み、魚の異変を早く察する技術者は、農業とも工場運営とも違う職種だ。規模を急ぐほど、人材不足がそのまま事故につながる。育成が投資に追いつくかが問われる。

ビジネスへの影響

補助金を前提にせず、単価と電気代で計画を組む

政策の追い風が吹くと、事業計画は補助金込みで甘くなりがちである。まず補助金をゼロとして計算し、それでも黒字になるかを確かめたい。見るべき数字は三つある。魚1キログラムあたりの売値、電気代、そして育てている間に失う魚の割合だ。このうち一つでも想定を外すと、利益は簡単に消える。たとえば電気代が2割上がったとき、利益がどれだけ減るかを事前に試算しておくと、判断が速くなる。補助金は、あくまで余裕分として扱うのが安全である。

参入前に進めたい、販売先と立地の準備

最初に固めるべきは、買い手である。飲食チェーンや小売、水産卸と、育てる前に購入の約束を取り付ける。量が決まれば、必要な設備の大きさも決まる。売り先が決まっていれば、規格や出荷時期に合わせた育て方もできる。次に立地を選ぶ。電気料金、きれいな水の確保、排水のルール、排熱を使えるかを比べる。陸上養殖は届出制の対象となっており、自治体への手続きも必要になる。

小さく始めて、実測した数字で広げる

いきなり大型設備を建てるのは避けたい。小規模な実証で、魚の成長の速さ、病気の出方、電気の使用量を実測する。その数字を持って金融機関や出資者と話せば、説得力がまるで違う。既存の水産会社、食品会社、設備会社と組み、足りない技術を補うのも近道である。撤退の条件をあらかじめ決めておけば、失敗しても傷が浅くて済む。大きな投資枠が示された今は、競争が増える前に実績をつくる時期である。

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